CI・VI・BIの違いとは?ブランドデザインとの関係をわかりやすく解説
「CI」「VI」「BI」。
ブランディングやロゴ制作について調べ始めると、この3つの言葉を目にする機会が増えます。しかし、それぞれの違いを明確に説明できる人は意外と多くありません。
実際には、「CI=ロゴ」と誤解されていたり、「VIはロゴの色を決めること」と説明されていたりするケースも見受けられます。こうした理解は完全に間違いではありませんが、本質を十分に表しているとは言えません。世界的なブランドデザイン会社では、現在「CI・VI・BI」という言葉よりも**Brand Identity(ブランドアイデンティティ)**という考え方でブランドを設計することが一般的です。¹
一方、日本では1980年代以降、多くの企業がCI(コーポレートアイデンティティ)を導入し、現在でも広く使われています。
つまり、日本と海外では、同じブランドづくりを指していても、言葉や整理の仕方が少し異なるのです。この記事では、CI・VI・BIそれぞれの意味を整理しながら、企業ロゴとの関係、ブランドデザイン全体とのつながり、そして世界ではどのように考えられているのかまで、実例を交えてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- CI・VI・BIそれぞれの意味と違い
- 企業ロゴとの関係
- 海外で主流となっているBrand Identityとの違い
- ブランドデザイン全体における位置づけ
- 中小企業はどこまで整備すべきか
結論|CI・VI・BIは「ブランドを構成する階層」が違う
CI・VI・BIは似た言葉ですが、それぞれ担当している役割が異なります。もっとも簡単に整理すると、次のようになります。
CI(Corporate Identity):企業そのものの考え方や存在意義を示す「企業のアイデンティティ」
VI(Visual Identity):ロゴや色、書体など、視覚的にブランドを伝える仕組み
BI(Brand Identity):企業や商品、サービスを含めたブランド全体の価値や体験を設計する考え方
つまり、ロゴはVIの一部であり、VIはCIやBIを表現するための手段です。この関係を理解すると、「ロゴだけを変えてもブランドは変わらない」と言われる理由も見えてきます。
ブランドづくりは、ロゴを新しくすることではなく、「企業として何を約束し、どのような体験を提供するのか」を一貫して設計することだからです。
CI(Corporate Identity)とは
CIとは、「Corporate Identity(コーポレートアイデンティティ)」の略称です。日本語では「企業の個性」や「企業としての存在意義」と説明されることが多い言葉ですが、本質はもう少し広い概念です。企業が「私たちは何者なのか?」「社会にどのような価値を提供するのか?」を明確にし、それを社内外へ一貫して伝えていくための考え方全体を指します。¹
そのため、CIはロゴそのものではありません。企業理念やビジョン、ミッション、行動指針、ブランド戦略、組織文化なども含めて、一つの企業としてのアイデンティティを形づくるものです。ロゴは、その考え方を視覚的に伝える手段の一つにすぎません。
<図:CIを構成する代表的な要素>
世界では「CI=ロゴ」とは考えられていない
日本では、「CIを刷新しました」というニュースとともに、新しい企業ロゴが発表されることがよくあります。そのため、「CI=ロゴ」と認識されることがあります。
しかし、世界のブランドデザインでは、そのようには考えられていません。例えば、ブランドデザイン会社のInterbrandやLandorが企業のブランド戦略を支援する場合、最初に検討するのはロゴではなく、企業の存在意義やブランドポジションです。²
つまり、ロゴは最後に形になる成果物の一つであり、CIそのものではありません。
檸檬デザイン事務所の視点
同業他社のホームページを眺めると「MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)」が見受けられ、
「うちも作らなくちゃな」と考えたことがありませんか?しかし、この3つを決めることを目的としてはいけません。AIに考えてもらうのはもってのほかで、生まれた子供の産声のデータを売り飛ばすのと一緒です。
ぜひ、「なんでこの会社を作ったんだっけ?」「最初に商品が売れたとき、どんな気持ちになったっけ?」と、非効率的に思い出を振り返りましょう。本当のミッションが宿ります。
あなたはまだ何の批判も浴びていません。「外野の幻影」を恐れず、ドメスティックに、仕事とは思わずノートに書いてみましょう。
VI(Visual Identity)とは
VIとは、「Visual Identity(ビジュアルアイデンティティ)」の略称です。企業の考え方やブランドの価値を、視覚的に伝えるための仕組みを意味します。多くの人が「ロゴデザイン」と聞いてイメージする内容は、実際にはVIに含まれるものです。
例えば、
企業ロゴ
ブランドカラー
コーポレートカラー
書体(タイポグラフィ)
写真表現
イラストレーション
アイコン
名刺や封筒のデザイン
Webサイトのデザインルール
これらはすべて、企業らしさを視覚的に伝えるための要素です。つまり、ロゴはVIの一部であって、VIそのものではありません。
VIは「統一感」をつくるためにある
では、なぜVIが重要なのでしょうか。理由は、一貫したブランド体験を提供するためです。例えば、Webサイトでは緑色、営業資料では青色、展示会では赤色、名刺では別のロゴを使っていたとしたら、同じ企業なのに受ける印象は大きく変わってしまいます。
一方で、AppleやIBM、無印良品などは、ロゴだけでなく色や余白、写真の使い方まで細かくルール化しています。だからこそ、広告でも店舗でもWebサイトでも、「その企業らしさ」が一貫して伝わるのです。³
檸檬デザイン事務所の視点
ロゴ単体だけを美しく設計しても、それを使うWebサイトや名刺、営業資料、SNSなどがバラバラではブランドは育ちません。
私たちは、ロゴを「完成品」ではなく、ブランド体験の出発点として設計することを大切にしています。
ちなみに、檸檬デザイン事務所では、今読んでいる記事を含め、読者の接点には随所にコーポレートカラーを使用しています。こうすることで、違うページに飛んでしまったという勘違いを回避したり、潜在化で体験を一貫させる効果を生んでいます。
BI(Brand Identity)とは
BIとは「Brand Identity(ブランドアイデンティティ)」の略称です。
ただし、ここで一つ注意したいことがあります。実は、日本で使われる「BI」という言葉と、海外で使われるBrand Identityという言葉は、必ずしも同じ意味ではありません。日本では、「CI → VI → BI」というように並列で説明されることがあります。一方、海外のブランドデザインでは、Brand Identityは企業やブランド全体を包括する概念として扱われることが一般的です。⁴
つまり、
ブランドの理念
ブランドが約束する価値
顧客体験
ブランドボイス
視覚表現
デザインシステム
これらすべてを含めたものがBrand Identityです。そのため、海外のブランドデザイン会社では、「BIを作る」というよりも、「ブランドアイデンティティを設計する」という考え方が主流になっています。
改めてCI・VI・BIの関係を整理すると
企業ロゴの相談を受ける中で、「CI・VI・BIの違いが分からない」という声は少なくありません。そこで、実務では次のように整理すると理解しやすくなります。
<図:CI・VI・BIの違い>
この表を見ると分かるように、ロゴはブランドそのものではありません。
ブランド全体という大きな考え方があり、その中にVIがあり、さらにその中の一要素としてロゴがあります。この階層構造を理解すると、「ロゴだけ変えればブランドが変わる」という誤解もなくなります。
海外では「Brand Identity」が主流になっている理由
現在、世界のブランドデザイン会社では、「CI」「VI」という言葉を前面に出す機会は以前より少なくなっています。代わりに多く使われているのが、Brand IdentityやBrand Systemという考え方です。その背景には、ブランドとの接点が急速に増えたことがあります。かつては、ブランドと顧客の接点はテレビCMや新聞広告、店舗、名刺などが中心でした。
しかし現在では、
Webサイト
スマートフォンアプリ
SNS
YouTube
デジタルサイネージ
音声アシスタント
AIとの対話
など、多様なチャネルでブランドが体験されます。つまり、「見た目」だけではブランドを語れない時代になったのです。例えばAppleを思い浮かべてみてください。Appleらしさは、リンゴのロゴだけで生まれているわけではありません。
製品を箱から取り出した瞬間の体験。店舗での接客。Webサイトの余白。製品同士が自然につながる操作性。
こうした一つひとつの体験が積み重なることで、「Appleらしさ」が形成されています。⁵そのため海外では、「ブランドとは体験全体である」という考え方が一般的になっています。ロゴは、そのブランド体験を象徴する重要な要素ではありますが、それだけでブランドを作ることはできません。
世界の歴史ある公共ブランドは、「Brand Identity」をどう設計しているのか?
企業ブランドというと、AppleやNikeのようなグローバル企業を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、CIやVIの考え方を学ぶうえでは、何十年、時には何百年もの歴史を持ちながら、多くの人に日常的に利用される公共ブランドが非常に参考になります。
ここでは、日本ではあまり知られていませんが、ブランドデザインの世界で高く評価されている4つの事例を紹介します。
(1)スペイン|Correos
Source: dezeen.com
スペインの郵送会社Correosは、約300年の歴史を持つ公共ブランドです。本ブランドが伝統を受け継ぎながらデジタル時代へ適応した代表例を紹介します。日本郵便のイメージを強く持つ私たちにとって、黄色のポストはとても新鮮に映りますが、スペインでは伝統的にCorreosのイエローが郵送
基本情報
創業:1716年
本社:スペイン・マドリード
事業:郵便・物流
リブランド:2019年
Correosは、スペインで最も歴史ある郵便事業者の一つです。2019年のブランド刷新では、ロゴをゼロから作り直したわけではありません。18世紀から使われてきた王冠と郵便ラッパ(Post Horn)という歴史的シンボルを現代向けに再設計し、スマートフォンやデジタルサイネージでも高い視認性を確保しました。
さらに、郵便局、配送車両、制服、アプリ、Webサイトまでデザインシステムを統一。「歴史」と「現代性」を両立したブランドとして再構築されています。
檸檬デザイン事務所の視点
ロゴはブランドの歴史を断ち切るためではなく、未来へ受け継ぐために刷新されることがあります。Correosは、「変えるべきもの」と「残すべきもの」の見極めが、ブランドデザインにおいて重要であることを教えてくれます。
(2)ドイツ|Deutsche Bahn
Source : Deutsche Bahn Official Syte
約30万人の従業員を抱える巨大交通インフラ会社「DB(Deutsche Bahn)」が、全国規模でCIを徹底している代表例。
基本情報
設立:1994年(現在の組織)
本社:ベルリン
従業員:約33万人
展開:ドイツ全土およびEU圏
赤い長方形に「DB」の文字だけというシンプルなロゴは、一見すると非常に控えめです。しかし、このロゴは駅構内、列車、アプリ、時刻表、制服、サイン計画など、数え切れない接点で一貫して使用されています。ブランドの価値はロゴ単体ではなく、「迷わない」「安心できる」という利用体験全体によって支えられているのです。
檸檬デザイン事務所の視点
優れたVIは目立つことではなく、「無意識に信頼できる環境」をつくることでもあります。DBは従来ブラック及びホワイトをブランドカラーとしていましたが、鮮やかなレッドを採用していることも特徴的です。
(3)スウェーデン|SJ AB (Statens Järnvägar Aktie-Bolag)
Source: Wikipedia Commons
北欧デザインらしい「機能美」をブランド全体で実現しているスウェーデンの鉄道会社、SJ ABを紹介します。
基本情報
創業:1856年
本社:ストックホルム
事業:鉄道旅客輸送
SJは、スウェーデン語で「国鉄」を意味するStatens Järnvägar(ステイテンス・イェルンヴェーガル)の略称です。2001年に分割民営化され株式会社(AB=Aktiebolag)となったため、現在の正称は「SJ AB」となっています。
SJのBrand Idetityは決して派手ではありませんが、ロゴ、駅案内、Webサイト、アプリ、車両デザインまでが一つの思想で設計されています。北欧デザインの特徴でもある「必要以上に主張しない美しさ」は、ブランド全体の使いやすさにもつながっています。
檸檬デザイン事務所の視点
優れたVIは目立つことではなく、「無意識に信頼できる環境」をつくることでもあります。DBは従来ブラック及びホワイトをブランドカラーとしていましたが、鮮やかなレッドを採用していることも特徴的です。
(4)オーストリア|ÖBB(Österreichische Bundes-Bahnen)
Source : ÖBB Official Website
ÖBBは、ドイツ語のÖsterreichische Bundesbahnen(エースターライヒッシェ・ブンデスバーネン)の略で、日本語では「オーストリア連邦鉄道」を意味します。前述のSJ AB同様、日本での旧国鉄と似通った歴史を辿っており、現在は民営化されています。ÖBBのブランドガイドラインは世界的にも高く評価。
基本情報
創業:1923年
本社:ウィーン
事業:鉄道・物流
ÖBBは、赤を基調としたブランドカラーを軸に、車両、駅、サイン、Webサイトまで統一されたデザインシステムを構築しています。ロゴだけを見ると非常にシンプルですが、その背後には「誰もが迷わず利用できる公共交通」というブランド思想があります。公共ブランドだからこそ、デザインは装飾ではなく、社会インフラの一部として機能しているのです。
檸檬デザイン事務所の視点
優れたブランドデザインは、目立つためではなく、人々が安心して利用できる体験を支えるために存在します。 ÖBBはRailjet(レイルジェット、特急列車)の車両は赤×赤、Nightjet(ナイトジェット、夜行列車)は青×赤、Cityjet(シティジェット、地域の快速列車)は白×赤とバリエーションに富んだ列車を有していますが、そのブランドの核は一貫性があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. CI・VI・BIの中で、最初に考えるべきなのはどれですか?
企業規模にかかわらず、最初に考えたいのは「何のために存在する企業なのか」という理念や目的です。つまり、CI(Corporate Identity)の土台となる考え方です。その考え方を視覚的に表現したものがVIであり、顧客が体験として感じる価値まで含めたものがBrand Identityへとつながります。ロゴから考え始めることもできますが、理念が曖昧なままでは、長く愛されるブランドを築くことは難しくなります。
Q2. ロゴを変えればブランドイメージは変わりますか?
ロゴを変更するだけでブランドイメージが大きく変わるケースは多くありません。ブランドイメージは、商品やサービスの品質、接客、Webサイト、SNSでの発信、広告、企業文化など、日々の体験の積み重ねによって形成されます。ロゴはその体験を象徴する存在ですが、それだけでブランドを変えることはできません。
Q3. 中小企業でもブランドガイドラインは必要ですか?
結論は「最小限必要です」檸檬デザイン事務所では、ある企業がロゴデータの使用を繰り返す過程で、いつのまにかデータの縮尺や色が変化し、誤ったデータを引き継いでいってしまう事態を何度か目にしています。
数百ページに及ぶブランドガイドラインを最初から用意する必要はありません。しかし、少なくとも以下の内容は決めておくことをおすすめします。
ロゴの使用ルール
ブランドカラー
推奨書体
余白や最小サイズ
WebサイトやSNSでの基本的なデザインルール
上記の項目のルールを制定するだけで、企業としての一貫性は大きく向上します。
Q4. CI・VI・BIはいつ見直すべきですか?
ブランドの見直しは、単に「古く見えるから」という理由ではなく、事業の変化に合わせて検討することが重要です。
例えば、
会社名や事業内容が変わる
新しい市場へ進出する
海外展開を始める
M&Aや組織再編を行う
ターゲット層が大きく変化する
こうしたタイミングは、ブランド全体を見直す良い機会になります。
まとめ
CI・VI・BIは似た言葉ですが、それぞれ役割が異なります。CIは企業の存在意義や価値観を定義するもの。VIは、それらをロゴや色、書体などの視覚表現へ落とし込む仕組み。そしてBIは、顧客がブランドに触れるあらゆる体験を含めた、ブランド全体の設計思想です。
世界のブランドを見ると、評価されている企業ほど「ロゴを作ること」を目的にはしていません。理念を定め、それを一貫したデザインと体験で伝え続けることで、ブランドへの信頼を築いています。企業ロゴは、そのブランドを象徴する大切な資産です。だからこそ、単に「かっこいいロゴ」を目指すのではなく、企業の未来を支えるブランド戦略の一部として考えることが重要です。
檸檬デザイン事務所では、見た目だけではなく、企業理念や事業戦略、将来の展開まで見据えたロゴデザインをご提案しています。「自社らしさを形にしたい」「長く使える企業ロゴを作りたい」とお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
参考資料・出典
¹ CI・コーポレートアイデンティティに関する基本概念(企業ブランディング・デザインマネジメント関連文献)
² Interbrand ブランド戦略・Brand Identity関連資料
³ IBM Design Language / IBM Design Program
⁴ AIGA・Brand Identity関連資料
⁵ Apple Human Interface Guidelines およびブランドコミュニケーション資料
⁶ Paul Rand『A Designer's Art』、IBM Corporate Design Program関連資料