2025年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ

檸檬デザイン事務所は企業ロゴ変更・新規事業ロゴをリードするデザインファームです。細部は制作実績もご覧ください。

PANTONEが発表した2025年の「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」は「MOCHA MOUSSE 」でした。このカバー写真は、MOCHA MOUSSEにちなんだ配色としています。

2025年もたくさんの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)刷新、リブランディングのリリースがありました。
今回も檸檬デザイン事務所では、弊所が話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更注目19社(PwC、古河電気工業、Adobe、NTTグループ、コクヨ、ヤマハ発動機ほか)を、現役デザインエージェンシーの視点で詳細に分析します。。ロゴ刷新を検討する企業・広報・デザイナーに役立つ実践的な示唆を提供します。
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*多くのリブランディングがあったため、弊所内で基準を設けて掲載しています。
*掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。
*本記事はデザインの視点で執筆した記事であり、各社との関係性を示すものではありません。
*掲載内容に不明な点がある場合、お問い合わせページよりご連絡ください(関係各社様のみ)。

Lemon Design Office presents an in-depth analysis of 19 notable corporate and service logo redesigns that gained attention in 2025, including PwC, Furukawa Electric, Adobe, NTT Group, Kokuyo, Yamaha Motor, and more. From the perspective of an active branding and logo design agency, this article examines the background of each rebrand, the design intent, and the impact on corporate branding, offering practical insights for companies, brand managers, and designers considering logo renewal.

14年ぶりのブランド刷新で示す、次世代プロフェッショナルファームの姿

PwCは、ロンドンを拠点に起き世界157ヶ国に広がる「監査・保証」「アドバイザリー」「税務・法務」を主力とするコンサルファームです。1849年創業のサミュエル・ローウェル・プライス(Samuel Lowell Price)の事務所と、1854年創業のウィリアム・クーパー(William Cooper)の事務所をルーツに持ち1998年にプライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers)となりますが、現在では世界4大会計事務所の1つと数えられます。

今回のブランド刷新は、14年ぶりの大きな変更となり、従来の複数の四角形を組み合わせたシンボルから、よりミニマルな構成へと変更されました。

【デザイン評:高さが減ってより使いやすく、しかしその代償も】
カラーは、PwCの象徴であるオレンジを継承しつつも、従来の要素が多く排除されています。以前よりロゴとしての高さが減ったことで文字比率が高まり文字「pwc」の比率が高まりました。

従来のロゴを認知している人にとってはサブリミナル効果でその変化に抵抗がないかもしれません。しかし、複数のオレンジを中心としたカラー要素が排除されたことによりブランドとしての差別化を図るには壁となる可能性があります。抜本的なリブランディングを図る場合、小文字でなく綴りに独自性のある「PwC」を採用してもよかったかもしれません。

2.古河電気工業(5801)

140年の歴史を未来につなぐ、グループCIの刷新

古河電気工業(古河電工)は東京証券取引所プライム市場に上場する、非鉄金属メーカーです。日本のインフラ発展を陰から支える存在ですが、国産初の海底電線製造や東京タワーへのアンテナ設置等多くのハイライトがあります。

創業した1884年から140周年を迎えた2024年にグループパーパスを制定し、2025年に今回のロゴを制定しました。

【デザイン評:国際化を見据えた場合のコンパクトな変化】
従来の古河電工は、漢字表記の「古河電工」と英字表記の「FURUKAWA ELECTRIC GROUP」を併用していました。今回のブランドリニューアルでは英字表記へ統一し、グローバルでの視認性と運用効率を高めています。一方で、カラーは従来のグレー調から脱却し、コーポレートカラーであるブルーを踏襲することで、ブランドの連続性を明確に保っています。

この規模の企業におけるリブランディングでは、ロゴデザインを大きく刷新したり、社名そのものを英語化するケースも少なくありません。その中で古河電工が選択したのは、ブランド資産を段階的に整理しながら、堅実に国際対応を進めるアプローチです。急激な変化を避けつつ、確実にグローバル市場を意識したCIへと移行する姿勢は、長寿企業のリブランディング事例として非常に示唆に富んでいます。

3.Adobe(アドビ)

シンボルマークと「Adobe」表記の調和

Adobeは、NASDAQ上場の米国IT企業で、ドキュメントフォーマット「PDF」の開発(2008年以降は国際規格化)や、Photoshop・Illustratorをはじめとするクリエイティブツール群で広く知られています。今回の企業ロゴ刷新では、ワードマーク「Adobe」が大きく見直され、シンボルマークである「A」に倣った力強い書体へと進化しました。

【デザイン評:シンボルマークとワードマークの差異を埋める挑戦】
Adobeの「A」マークは1982年の創業期からの象徴で、太さと存在感のあるシンボルとして定着してきました。一方でワードマークの「Adobe」は比較的スタイリッシュで中性的な印象を与えており、長年にわたり両者の間には視覚的な齟齬がありました。

シンボルの力強さにワードマークを近づける試みは、字形の比率や文字間、線の太さなど設計上のトレードオフを伴う非常に挑戦的な作業です。結果的に、ブランドの核心的アイデンティティである「A」から発想を得たワードマークに統一できた点は評価に値します。見た目の一貫性を高めつつ、クリエイティブ領域で培ったブランド性を損なわないバランス感覚が示された刷新です。

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4.NTTグループ(旧日本電信電話株式会社)(9432)

日本最大級とも言える巨大なCI刷新

NTTは1952年に設立された日本電信電話公社を起源とし、民営化を経て国内の通信インフラを長年支えてきた通信グループです。ドコモをはじめとする事業群を含み、日本国内での認知度と影響力は極めて高い存在です。今回、商号を「NTT株式会社(NTT, Inc.)」へ変更し、CIを国内外で「NTT」に統一する大規模なブランド統合が行われました。

【デザイン評:”ダイナミックループ”への回帰で実務性と普遍性を確保】
NTTシンボルの電話線を1回巻いたような円形は「ダイナミックループ」と称され、亀倉雄策氏(1915-1997)が関与した伝統的な資産です。今回のリブランディングでは、グループ全体でこのダイナミックループへの回帰と統一が図られ、従来シンボルを使用していなかったNTTドコモや一部子会社にも波及しています。

ワードマークに関しても、従来のスラブ調からNTT DATAで使われていた配色やワードマークへと整合を図るなど、グループ全体の視認性・運用性を高める実務的判断が見て取れます。

CI統一に際して懸念される各社の個性のデザイン個性が失われる問題については、広報と段階的運用でのカバーにより最小限に抑えられている印象です。街中に残る旧ロゴの更新は時間を要するため、完全な浸透は今後の運用に委ねられますが、近年でも最大級のCI統合事例と評価できるでしょう。

5.コクヨ(7984)

社内プロジェクトで到達した、過去と未来の最適解

コクヨは大阪本社の文具・オフィス家具メーカーで、所謂「Campus」ノートは累計30億冊を超えるヒット商品です。1905年創業の歴史を背景に、創立120周年の節目に実施された今回のリブランディングは、空間デザイン事業やグローバル展開を見据えた企業の意思表明でもあります。

【デザイン評:回帰の中で未来への姿勢を示す】
企業/サービスの理想像を強く打ち出すことがロゴの目的である一方、大企業のリブランディングは既存の顧客やファンを置き去りにしないという配慮が不可欠です。コクヨの新ロゴは、1981〜2005年頃に使用されたロゴへの回帰を想起させる一方で、「好奇心を人生に」という新たなタグラインや、カラフルな斜線を用いた展開で新しいKOKUYOを育てる静かな意志を感じ取ることができます。

社内主導で丁寧にアイデンティティを再定義した点が特筆され、ブランドの継続性を保ちながら次世代の接点設計まで見据えた完成度を感じさせます。個人的には、斜線角度の遊び心(594°=コクヨ)の説明は、なくても良いし、数年後に明らかになるくらいがよりプレゼンスが高まったのでは、と感じました。

6.ヤマハ発動機(7272)

デジタル時代に適応する、27年ぶりのロゴ進化

ヤマハ発動機は、東証プライム市場に上場する輸送機器メーカーであり、二輪車やマリン製品を主力としています。本記事の性質上説明すると、音楽機器の製造を主力とするヤマハ株式会社は、現在資本関係がない別会社です。歴史的には日本楽器製造から分派した経緯を共有しています。
今回のロゴ刷新は、デジタル時代の視認性を最優先したデザイン変更として位置付けられます。

【デザイン評:業界の潮流を的確に取り込む】
「自動車業界のロゴのミニマル化」はここ数年一気に加速しており、BMWやフォルクスワーゲン、日産自動車など、立体的なエンブレム調のロゴからシンプルなアイコン調へのロゴと次々のCI刷新が行われてきました。

立体的で装飾的だったエンブレムをフラットで記号化したデザインへ移行する潮流の中、本件も象徴性を損なわずに表現を簡潔化し、低解像度や小さなアイコンでの再現性を高める判断がなされています。ブランド資産(音叉や象徴的モチーフ)を活かしつつ、現代の運用要件に合わせた改良と言えるでしょう。

7. 吉野家ホールディングス(9861)

主力事業のカラーを採り入れたリブランディング

吉野家ホールディングスは吉野家をはじめ、はなまるうどん、京樽など複数の外食ブランドを擁する持株会社です。今回の持株会社ロゴ刷新では、箸をモチーフにした意匠が導入されました(吉野家ブランドそのもののロゴではありません)。

【デザイン評:カラーリングが伝える“血の通った”メッセージ】
従来のグレー基調のロゴは中立性や持株会社らしいトーンを示していましたが、今回の刷新では吉野家やはなまるうどんで親しまれているオレンジ系の色を採用しています。この色の変更だけでグループの一体感や主力事業へのシンパシーが自然と伝わります。箸のモチーフの解釈については、丸い要素は皿のようにも見えますが、公式には麺を表現しているという説明もあり、デザインの解像度を高めるブランディング説明が今後重要になるでしょう。

8. 雪印メグミルク(2270)

数奇な歴史を経て、100年目

雪印メグミルクは1925年創業の乳製品メーカーで、長い歴史の中で事業構造の変遷とブランドの再編を経験してきました。100周年を契機に、従来の「ミルククラウン」に見られた外枠を削ぎ落としてやわらかな表現へと刷新しています。

【デザイン評:製品イメージに沿った柔和な調整】
1925年に創業し、2002年には食品部門を廃業する等、責任を負いながら真の刷新を追求してきた雪印メグミルク。製品ブランドとしてのシフトはありつつ、ついに今回のタイミングで企業ロゴも雪印乳業に見られたクラシックな明朝体を取りやめ、やわらかな印象をもつデザインに変化しました。

丸みを帯びたのはフォントだけでなく、雪の結晶の線も同様で、樹枝のように伸びた部分もミニマルなデザインとなっています。「雪の結晶」「雪印」「メグミルク」に統一性が生まれたことにより、顧客とのコミュニケーションより円滑になることが期待されることと思います。

ちなみに、雪印メグミルクの英称は「MEGMILK SNOW BRAND」であり、グローバル展開も今回の刷新を踏襲したデザインとなっています。雪印はSnow Brandとなることに不思議な感覚を覚えつつ、メグミルクというやわらかな語感は「MEGMILK」としてもMEGは女性名(Margaret(マーガレット)、Meghan(メーガン))の愛称に使用されますし、やわらかさが保たれている印象を受けます。

9.Umios(マルハニチロ)(1333)

過去のCIを踏まえつつ「海」を社名に据える決意

マルハニチロは145年を超える歴史を持つ食品・水産企業です。長い歴史の中で社名変更や統合を経てきた同社は、2026年に商号を「Umios(umi+one+solutions)」へ変更することを発表しました。社屋移転など運営面での変化も含め、大きな節目のリブランディングです。

【デザイン評:「-os」の語感と説明の必要性】
「Umios」への社名変更は、海を原点とする企業のストーリーを言語化した前向きな挑戦です。ただし、「-os」がone+solutionsであるという説明は、生活者接点での即時理解を得るうえで説明過多に映る可能性があります。

ある日ある人がスーパーの冷凍食品コーナーにいきメーカー名を気にした場合「味の素」「ニチレイ」「日清食品」と比較し「Umios」をどう思うのでしょうか。そして「Umios」の「os」部分がone+solutionsであるという説明は、どうしても必要だったのでしょうか。語感が先行し我田引水的に説明を加えている印象を受けてしまいます。そう考えると、短く明快な語感の方が有利な場面も多く、今後のマーケティングとネーミング施策の見せ方が成否を左右するでしょう。

10.BIGLOBE(ビッグローブ)

時代と業態の変化を反映した、顧客との適切な距離感

BIGLOBEはインターネット黎明期に立ち上がった老舗のIT企業で、現在はKDDIグループの一員として通信サービス等を提供しています。今回、新スローガン「好きが、未来を変えていく。」とともにロゴを更新しました。

【デザイン評:親しみやすさの回帰と適度な信頼感】
初期のBIGLOBEは丸みを帯びたキャラクターやゆるさを武器に親しみを築いてきました。今回のワードマークはその親しみやすさを再び取り込みつつ、だらしなくならない程度に抑制されたデザインです。上部に配されたアーチは、グループ親和性や地平線を示唆する表現と読み取れるなど、既存資産をうまく再解釈した点が評価できます。

余談ですが、前述の丸みを帯びたキャラクター(びっぷる)は、検索サイト当時は透明感のある水玉のようなイメージでしたが、現在は青いスーモ君のようなビジュアルになっています。そんな変遷も含め、ブランドの進化を知ることができます。

11.佛教大学

共生の理念を可視化する、34年ぶりのVI刷新

佛教大学は1912年創立の私立大学で、浄土宗の教えを基盤とした教育理念を持ちます。1991年以来となる34年ぶりのVI刷新(校章ではなくロゴの変更)が発表されました。

【デザイン評:差別化困難なモチーフに対する思い切った漢字回帰】
従来のロゴはネガティブスペースを用いた「B」に虹色が伸びるデザインで、どこか汎用的なテクニックに頼る印象がありました。今回のリブランディングは対照的に、大学カラーの濃い紫一色でまとめ、「佛」の字を模した独特な「B」一文字のシンボルマークを完成させています。

読み手によっては佛に見えないという意見も出るでしょうが、本稿の観点では「他と区別できる」ことが最重要であり、その点を強くクリアしていると評価します。大学ブランドとしての記憶想起力が向上する可能性が高く、長期的なアイデンティティ強化に資する変更です。

12.大韓航空(Korean Air)

41年ぶりのCI刷新、太極モチーフのミニマル化

大韓航空は韓国最大の航空会社で、アシアナ航空の子会社化など近年の組織再編を経ています。2025年のCI変更では、伝統的な太極マークを多色表現からダークブルーの単色へと簡潔化し、機体表記も「KOREAN AIR」から「KOREAN」のみへと見直されるなど大きな変化が含まれています。

【デザイン評:プレミアム化と国際性を意図したモノクローム化】
単色化と書体の変更は、プレミアム路線の印象付けや国際市場での視認性向上を狙った判断と読めます。一方で旧ロゴに含まれていた独特の筆致あるフォント(習字を英語化したようなセリフ調のデザイン)は、文字そのものがブランドを想起させる強力な資産でもありました。例えるなら、コカ・コーラの同じくらいクラシカルで読みにくいのに、ブランド認知を確立できる可能性を持っていたかもしれません。

そんな「文字そのものでブランドを想起できる貴重なポテンシャルを持っていたデザイン」から決別し、将来的に旧ロゴの要素を再評価する局面があっても不思議ではないでしょう。まずは、現在の方向性は洗練と統制を重視した合理的な刷新を観察しましょう。

13.ルフトハンザ航空

統合型グループへの進化を示すCI刷新

ルフトハンザは1926年創業で、2026年に100周年を迎える欧州の旗艦航空グループです。今回のCI刷新では、ルフトハンザの象徴である「ツルに円」から円を取り除いたバージョンを採用し、子会社ブランドには「Member of Lufthansa Group」の表記が順次付与されるなど、グループ統一を見据えた体系化が進められています。

【デザイン評:持株会社と事業会社の関係整理の好例】
このプロジェクトは、グループ会社としてのデザインを、航空ブランドの円を外してグループの再定義を図っています。

円を外したシンプルなマークと、子会社に付与される「Member of…」表記は、親会社と事業会社の関係を視覚的に明確化する仕掛けとして有効です。多数のブランドを抱える企業グループにとって、親和性を損なわずに混同を避けるという難題に対するシンプルで効果的な解法だと考えられます。航空業界に限らず、多ブランド戦略をとる企業の参考事例になり得る刷新です。

14.クラフティア(旧九電工)(1959)

地域企業から社会基盤企業へ

株式会社クラフティアは、東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場している福岡県本社の総合設備建設会社です。電気、空調・衛生、配電線工事などの設備工事業を主軸に、再生可能エネルギーや不動産開発なども手掛けています。2025年10月1日付で社名を「クラフティア」に変更し、コーポレートロゴも刷新しています。

【デザイン:飛躍しすぎず堅実なリブランディング】
従来のロゴは「kyushu」の「k」にも見える、赤緑青のポリゴンが羅列されたデザインでした。3色以上使用していることでやや雑多な印象でしたが、今回はその系譜をなぞり、そのまま「K」へと組み替えたようなデザインでリブランディングに一貫性を感じることができます。

一方で「KRAFTIA(クラフティア)」というネーミングの正当性は、疑問が残ります。商標としての登録可能性などもあるとして、名詞+ティアの名付けは、これを国際化と言うのであれば検証不足に思えます。認知度の観点でもドメインの観点でも、名前は短ければ短いほどメリットは多いです。「KRAFT」のみにしたり、後述のヨドコウ(旧淀川製鋼所)のように短名化や略称活用の検討があっても良かったかもしれません。しかし、リブランディング全体としては既存資産を活かしつつ信頼性を損なわない堅実な判断に見えます。

15.ヨドコウ(旧淀川製鋼所)(5451)

設立期から続く「桜」をロゴに投影

株式会社ヨドコウ(旧称:淀川製鋼所)は、東京証券取引所プライム市場に上場している大阪府本社の独立系鉄鋼メーカーです。鋼板事業のほか、「ヨド物置」で知られる建材・エクステリアの製造・販売など複数の事業セグメントを展開しています。

社名を「ヨドコウ」へ変更した上でロゴも刷新しました。創業以来の社章に見られた「桜花」の系譜を踏襲している点が特徴です。

【デザイン評:ストーリーと抵抗の少ない改名の好例】
社章や象徴としての「桜」は歴史的資産であり、新社名「ヨドコウ」は従来から親しまれてきた愛称を正式化したものです。この手法は抵抗感を抑えるだけでなく、既存のブランド認知を正に資産として活用するスマートな戦略です。ネーミングライツでの地域貢献(例:ヨドコウ桜スタジアム)とのシナジーも含め、過去からの継続性を損なわない良好な事例です。

16.第一ライフグループ(第一生命ホールディングス)(8750)

第一生命から「第一ライフ」へ

第一生命ホールディングスは、国内大手の生命保険グループを傘下に持つ持株会社であり、東京証券取引所プライム市場に上場しています。事業セグメントは国内/海外保険事業等で構成されています。1902年に設立され、2010年の上場以降に持株会社体制へ移行しています。2026年4月1日付で商号を「第一ライフグループ」へ変更し、グループブランドロゴを全面刷新することが発表されました。

【デザイン評:アイデンティティ色の切り替えに対する疑問】
新シンボル「Daiichi Life Flag」は「D」をモチーフにした旗状の造形で、海や空の水平線を想起させるという説明があります。旧来の赤やゴールド調の信頼感あるトーンからブルーへ転換した点は意図的であっても、過去に付与されてきた象徴的価値との繋がりが十分には説明されていない印象を受けます。アイコン化のトレンドに沿った更新であるものの、色味と象徴性の連続性については今後のコミュニケーションで補強が必要でしょう。

17. マイポックス(旧Mipox)(5381)

誤読を防ぐカタカナ表記への舵取り

マイポックスは研磨材・研磨装置を主力とする工業メーカーで、歴史的な変遷を経て2025年に商号を「マイポックス」へ変更しました。従来の「Mipox」からカタカナへ切り替える判断は、日本市場での可読性と認知のしやすさを改善する狙いが伺えます。

【デザイン評:印象ある要素は1つでよい】
ネーミングの明快化は顧客接点での誤読リスクを低減し、国内で戦う企業として合理的です。ロゴ面では旧ロゴの伸びやかな「x」から、両側の三角でネガティブスペースに「M」を表現する新ロゴへと変化しました。

ロゴについては、ブルーの「mipox」表記で伸びやかな「x」が特徴的だった旧ロゴから、両側の三角とネガティブスペースで「M」を表現した赤色の「MiPOX」となりました。

新ロゴは、新たに両側の三角を獲得し、自社を想起してもらえる要素となったと思います。
しかし、2つ目の白抜き「M」があることで、むしろ相互に打ち消してしまっているのが勿体無いです。
また、頭文字は当然2文字目以降よりも象徴的な価値を持つことが多いですが(村田製作所などは特異な例)、これも白抜きにしてしまったことでインパクトは弱まり、もしアイコン的に1文字でブランド展開をする場合にハードルとなることでしょう。頭文字の視認性が弱まると、アイコン化や一文字展開において課題になる可能性があるため、Mの表現方法を別案で検討する余地があるでしょう。

18.品川リフラ(旧品川リフラクトリーズ)(5351)

古典的表現から抽象度の高いリブランディング

品川リフラは耐火物メーカーとして長い歴史を持ち、社名を略称化して「品川リフラ」とした上で2025年にコーポレートロゴを刷新しました。創業150周年の節目にふさわしいリブランディングと言えます。

【デザイン評:抽象化は説明責任を伴う】
社名は品川リフラと略称がそのまま社名となり覚えやすくなりました(リフラクトリーズは耐火物という意味です)。主力事業を踏襲するならストレートに「品川耐火」など、ネーミングについてブレストしてみるのも、発想力が鍛えられるかもしれません。

新ロゴは、創業以来の象徴である「ひし形」を継承しつつ、いくつかの色彩でアイデンティティを表現しています。このシンボルマークは、名称(品川リフラの「品」や「S」)やサービス(耐火物を想起させるなにか)を示すでもない、抽象的なシンボルに分類されます。

抽象的シンボルは理念や事業の多様さを表現しやすい一方で、直感的に事業内容(耐火物)を想起させにくい欠点があります。このデザインは、2つの円(耐火物事業とそれ以外の事業)の交わりで生まれたラインに美しさはあります。この先、強いシンボルを構築できれば長期的に独自性を確立できますが、運用初期は「これはどういうロゴか」を説明する施策が不可欠でしょう。

19. ANRI(アンリ)

ミニマル化の潮流に抗う、視覚的衝撃

ANRIは2012年設立の独立系ベンチャーキャピタルで、シード投資を主軸にラクスルやUUUM等の成長企業を輩出してきました。累計運用総額や支援プログラムを通じ、国内スタートアップ・エコシステムで一定の存在感を示しています。

【デザイン評:トレンドを一歩進める大胆さ】
ここ数年のロゴ潮流はここ数年ずっとデジタル環境に適応するためのシンプル化、ミニマル化が続いているように思えます。しかし、突如発表された、こちらのロゴ。

このANRIロゴの一手は、ずっと一方向だった流れが逆回転を始めるような、ポールシフトが始まるようなインパクトを覚えました。立体オブジェクトをそのまま設計し、なによりこのアイデアを貫いたディレクション力と、経営陣の決断力。360度のうち、特定の角度から見たときだけ「A」「N」「R」「I」という文字が浮かび上がるという前衛的なデザインとのことも感心ポイントですが、解説するのも失礼なくらいの第一印象の強さがあります。

20.まとめ

2025年もここに紹介できないほど多くの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)刷新を図りました。CIJ(東京証券取引所プライム上場(4826)独立系ソフトウェア開発企業)やディー・エル・イー(朝日放送系コンテンツプロデュース企業、秘密結社鷹の爪等のIPコンテンツで有名)など、紹介したい企業は数多くありましたが、割愛させていただいております。

今回の企業CI刷新の背景も、企業にとって節目の時期であったり、社内外の情勢の変化、資本関係の変化など様々な理由があります(本稿以外にも、旧富士通ゼネラルがパロマ・リームHD社の完全子会社となった流れを汲んで2026年から「ゼネラル」となる報道もありました)。

世の中のデザインのトレンドはありつつも、やはり改めて感じるのは企業が自身を枯れ果てるまで見つめ直し、これまでの足跡にも経緯を示し、1つの答えを体現していくことが良いリブランディングなのではないかと考えています。

檸檬デザイン事務所ではCI(コーポレート・アイデンティティ)の役割は、「企業の実像を、社内外に投影するレンズである」と捉えています。2030年に向かってデザインの潮流がどこにいくのか、この記事が読者にとってその流れを作る契機になれば幸いです。

<告知>檸檬デザイン事務所は、新会社設立やリブランディング等、事業フェーズに応じ、費用感に柔軟性を持って取り組むことを心がけています。細部はContactページよりご相談ください。

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